ブラームスの交響曲全4曲のランキングです。
バッハ、ベートーヴェンと「3大B」と並び称されるブラームスは、交響曲の分野では”ベートーヴェンの正統継承者”という位置付けをされています。
慎重なブラームスは、ベートーヴェンの9曲の交響曲に匹敵するものにするために、第1番の作曲に21年もの年月をかけ、43歳の時にやっと完成させたと言われています。
その準備として、2つのセレナードやピアノ協奏曲などで管弦楽の手法を確かめ、当初は交響曲に用いるはずだった楽想を転用したりしていました。
満を持して世に問うた第1番は、指揮者のハンス・フォン・ビューローに「ベートーヴェンの交響曲第10番」と呼ばれ、高く評価されました。
ただそれをもって第1番が、ランキングで上位になるかどうかは別の話。他の曲の方がブラームスらしいロマン的な感覚が息づいていることもあり、そこが悩みどころです。
以下、ランキング順に各曲の簡単な説明とおすすめCDのご紹介をしていきます。
第4番 ホ短調
ブラームスの最後の交響曲。バッハ時代に遡るような形式(終曲はパッサカリアで主題もバッハのものから借用)を用いたりしているために、「古臭い」という評価もあるようですが、なかなかどうして、ロマンティックなブラームスのエキスが詰まったまさにロマン派そのものの曲であります。
52歳で世に問うたこの第4番。一分の隙もなく構築された音楽は、「通にしかわからないのではないか」という周囲の懸念もありましたが、結局歳月はこの曲の価値を認めたのです。
曲は、4楽章から成っています。特におすすめなのは、第1楽章と第4楽章。
第1楽章は、まるでため息をつくような、か弱い第1テーマで開始されます。音を追いかける木管も息切れしているかのようです。その流れがファンファーレのような三連符のフレーズで中断されると、チェロが中音域から重厚な第2テーマを奏で始めます。展開部では、先の三連符のフレーズがオーケストラの絶叫と化し、悲憤に泣きわめくような感じを与えます。コーダ(終結部)には、か細かった第1テーマが打ってかわって毅然とした強奏のカノンで演奏されます。しかしその印象は・・・勇ましいどころか「悲しい運命の勝利」ともいうべき諦念のトドメといった「痛い」印象を与えます。
第4楽章は「パッサカリア」。同じ主題が低音でずっと繰り返され、その上で多様な旋律と和音が繰り広げられるという、音楽的には高度なテクニックが使われています。冒頭の管楽器を中心とした緊張感のある和音を擁したテーマがこの曲の基本骨格です。これが終結部ギリギリまで低音部で執拗に繰り返されていることをほとんど感じさせないほどの千変万化で充実した楽章。この曲はクラシック音楽を知れば知るほどそのもの凄さがわかってきます・・・
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第2番 ニ長調
この曲は、4ヶ月ほどで完成されており、第1番をやっとこさ書き上げた後の開放感もあってか、伸びやかで自由な曲調になっており、ブラームスの田園交響曲と呼ばれることもあります。
南オーストリアのペルチャッハに避暑に行った際に書かれたもので、ブラームスの親しい友人は「ペルチャッハはさぞ美しいところなのだろう。」とこの曲を聴いて語ったとか。そういう背景のもとに生まれた曲は、喜ばしく生気に満ちたものとしてランキングも上がったわけです。
第1楽章の冒頭に低音弦に現れる「レ・#ド・レ」が、交響曲全体をまとめるモチーフとして何度となく現れますので注意。すぐその後でホルンで出る第1テーマはまさに牧歌的です。ひとしきり発展してトロンボーンの和声で一段落すると、ヴァイオリンが空高く雄大なフレーズを奏でていきます。スタッカートの可憐なモチーフの経過句の後に、チェロによる渋いですが歓びに満ち足りた感のある第2テーマが流れます。「レ・#ド・レ」とスタッカート句は展開部で徹底的に用いられます。
第2楽章は、ロ長調なのですが、ブラームスらしい渋みがあり短調的な響きが多くなっています。最初のテーマに絡むファゴットの対旋律が結構重要な役割を演じます。ちょっと幻想的な管楽器中心のフガートの経過句を経て嬰ヘ長調の楽しげな第2テーマが踊ります。最後はちょっと悲劇的な印象で終ります。
第3楽章は愛らしいスケルツォです。2回現れるトリオが材料は同じながら変化を見せて面白い曲になっています。初演時にアンコールされました。
フィナーレは、最初はモヤッとした感じのテーマで始まります(そこに例の「レ・#ド・レ」がちゃんとあります)が、すぐに華やかになります。全体的にブラームスらしからぬ(!?)歓喜の感情を爆発させた曲で、最後にトランペットとトロンボーンで盛り上がるコーダまで一気に走り抜けます。
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第1番 ハ短調
冒頭でも取り上げたように、21年の歳月をかけた力作です。「暗から明へ」という、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」や第9番「合唱」を思わせる全体の構成も見事。
第1楽章の悲劇的な序奏の冒頭で高音部で出る「ド・#ド・レ」が全体の主要モチーフ。その上昇する力を阻止するように下降する楽器群との壮大なせめぎあいに圧倒されます。主部に入るとやはり「ド・#ド・レ」が登場して不安に満ちた第1テーマを誘導します。長調の第2テーマもどこか儚げで、楽章としては不安と闘争の雰囲気に覆われます。最後は長調になるものの諦念ともいえるような感じで終ります。
第2楽章の悲しげなホ長調、第3楽章の夢幻的なスケルツォを経て、最も劇的な第4楽章に入ります。
第4楽章の序奏は、第1楽章のそれと同じくらいに深刻でより劇的なものです。それがやがて不安の霧が晴れて出てくる金管楽器の響きの輝かしさ。やがてベートーヴェンの「歓喜の歌」へのオマージュのようなテーマによる喜ばしいフィナーレ主部に入ります。最後は足を踏み鳴らすようなモチーフによるテンポアップしたコーダで大団円を迎えます。
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第3番 ヘ長調
交響曲の全体の構成を引き締めるために共通のモチーフをブラームスは用いました。それを徹底的に駆使したともいえるのがこの交響曲です。冒頭の「ファ・♭ラ・ファ」がそのモチーフなのですが、音の高さを変えながら何度となく現れるさまは、技巧的には素晴らしくても音楽としてはどこかしつこさも感じないわけにはいきません。やり過ぎはなんでも野暮になってしまいます。あと第3楽章が映画音楽のテーマなどに使われるあまりにも甘ったるい歌謡的な旋律であることも、アマノジャクな自分としてはランキングを下げる原因になりました。もっともこの辺は意見が分かれるところでしょう・・・。
第1楽章は、「ファ・♭ラ・ファ」を管楽器が高らかに謳って開始します。その後にすぐ現れる第1テーマはなんともなく重い。第2テーマは流麗な感じですが、保続音が寂しげな未練のようなものを感じさせます。この流れの中でも先のモチーフはいろいろなところに表れています。これは一度スコアで確かめていただきたいところ。
第2楽章は、素朴なハ長調のテーマを元にした中庸な速度の曲。途中のイ短調の部分はちょっと内省的な感じになります。第3楽章は前述しました通り美しい楽章です。聴けば「あぁ、あの曲か」とわかる曲。
第4楽章は、一番わかりにくい感じがします。第1テーマはヘ短調でありグニャグニャした暗い印象で、やがて闘争的なフレーズで盛り上がってから、3連符が特徴的な長調の第2テーマが多少喜ばしげに登場します。しかしどうも短調が中心で盛り上がらないのですよね・・・。最後は第1楽章のテーマもちらつかせながらとりあえずはヘ長調で終りますが、どうも煮え切らない印象が残ります。
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敢えてランキング分けはしましたが、彼の交響曲は全て一級品であることは間違いなく、ただその中で「音楽の面白さ・楽しさ」といった面で並べるとこうなるということであります。ご了承いただきたく。