シューマンの交響曲全4曲の順位付けです。
ものの本には、シューマンのオーケストレーションは単調で変化に乏しく、他の作曲家の交響曲には見劣りがするという記述を見かけることがあります。私も最初は、なんて一本調子で退屈な交響曲だと思ったものです。ベルリオーズやラベルやストラヴィンスキーなどの華麗でダイナミックなオーケストレーションが一番と感じていました。
しかし次第に色々な曲を聴いていくにつれて、自分の考えに疑問を感じ始めました。実は、『オーケストレーション』が華麗であるリヒャルト・シュトラウスがどうしても好きになれなかったのです。今にして考えれば、各楽器を自由自在に操る感じが鼻についていたようなのです。
シューマンの交交響曲は、確かに決まった楽器だけが独り相撲をとっているようなところはあります。しかしそれはピアニスティックなシューマンが、オーケストラをまるで大きなピアノのように思いながら楽想をめぐらせた結果なのではないでしょうか。そんなことを思いながらいつの間にか彼の交響曲にのめり込むようになったのでした。
シューマンの交響曲ランキング
以下、ランキング順に各曲の簡単な説明とおすすめCDのご紹介をしていきます。
第3番 変ホ長調 「ライン」
この曲のニックネームは、あの『ライン川』にちなんだものであります。
曲はいきなりの全奏で第一主題が響き渡ります。二拍子のように聞こえますが、シンコペーションした急速な三拍子です。勢い良く流れていく大河を感じさせます。しかしすぐにメランコリックな第二楽章がト短調で紡がれ始めます。この辺の気まぐれさがシューマンのシューマンたる所以でしょうか。そしてあまりにもよどみが無い曲の流れがまた彼独特の「切れ目の無い」スタイルをつくっていると思います。
展開部になっても、同じようなフレーズを繰り返しながらゆるゆると進んでいきます。ベートーベンのように主題を分解しながら徹底的に展開していくのとは違って、大きな挿入部といってもいいかもしれません。主題が主題なだけに、モチーフとしての展開が出来なくてもがいている感じも受けます。
そしてホルンが第一主題の出だしを朗々と吹き始めるころから再現部への準備が始まります。ここからの再現部までのつなぎがなんとも私の好みの箇所であります。短調と長調とで主題を繰り返しながら少しずつクレッシェンドしてついに再現部へ突入するまでの勢いある流れは、まだ見ぬラインの流れを彷彿とさせます。これに続くゆるやかなスケルツォの第2楽章、室内楽風の第3楽章、コラール風で荘重な第4楽章、そして祝典的な喜びに満ちたフィナーレまで楽しく快いものです。
この曲は、シューマンがベートーヴェンの『英雄』を聴いて感動し、それに導かれるように作曲したとのことですが、ロマンティックな作風のためか、英雄というよりもたくましい女神像のような曲になってしまったのはなんとも御愛嬌です。そこのところがまた大好きなところなのですが。
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第2番 ハ長調
実は、この曲は、地味な彼の交響曲の中でも最も目立たなくて演奏機会にも恵まれていません。でも私は、シューマンのたぐい稀なる楽想が次々と湧き出る様を眺められるこの曲は大好きです。なまじ堅苦しいガッチリとした交響曲とはちょっと離れた、大きな室内楽としての楽しみといったらいいでしょうか。
出だしは、第4番の序奏を長調で進めているといった調子で単調な歩みが続きます。実はそれに隠れてトロンボーンで示されるモチーフが重要なのですがほとんど目立ちません。これがなんとも歯がゆいというか奥ゆかしいというか。。。
やがて付点のリズムが加速していくと、主部に入ります。第一主題はほとんど確保されることなく次々と楽想が連なります。この辺はモーツァルトの『パリ』交響曲にも通じるかもしれません。全体はソナタ形式を自由にした雰囲気で進んでいきます。最後は、先のトロンボーンのモチーフを強奏しながら付点リズムのトゥッティで締めくくります。
第2楽章は、2拍子のスケルツォです。無窮動のように動き回る主部と、対照的な2つのトリオが楽しいです。第3楽章はまさに室内楽。シンフォニーであることを忘れそうです。
フィナーレは、音階上昇で勢い付けして付点で跳ね回ります。急速でありながら楽想はゆったりとしており、これまた自由な形式で続きます。途中のミノーレの部分を経て、最後は第1楽章の楽想をも含めて大団円を迎えます。数々の楽想を振りまいて「あー楽しかった」といった感じです。
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第4番 ニ短調
この曲は実は最後の曲ではなく第1番の次に作曲は始まったようなのですが、一応4番ということになっています。本人もあまり自信がなかったらしい。。。 ただ、全曲が切れ目無く続くという新機軸を出していることや楽想の統一感などはどことなく老成した雰囲気を漂わせています。
音階をのらりくらりと上り下りしているような序奏から主部に入ると、十六分音符でのこれまた変化がないような第1主題が続きます。大またの第2主題を挟みながらほぼ形通りのソナタ形式で進みます。一応の終止をみるとすぐ第2楽章に入ります。
第2楽章のオーボエとチェロで紡がれる哀愁に満ちた主題は、なんとも美しく切ないです。第1楽章がニ短調なのにここもイ短調であるというのも物悲しい。途中楽しげな楽想も入りますが、総じて孤独な雰囲気が漂います。
第3楽章はカノン風に始まります。これもニ短調。いい加減短調で押しすぎな感じですがシューマンはへこたれません。次のフィナーレの序奏もニ短調で入ります。
フィナーレの主部は、第1楽章の第1主題をニ長調にした形で入ります。やっと長調になって弾けています。彼の好きな付点リズムが合いの手で入ります。後はその流れのままに楽しげに進行して爽やかに終止します。
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第1番 変ロ長調
『春』という愛称の通り、楽しい彼の最初の交響曲です。なんか素朴で馬鹿正直で憎めません。
いきなり金管と木管で出されるモチーフが第1楽章を支配します。序奏の雰囲気は、ベートーベンの第2番の序奏に似ています。シューマンの精一杯の誠意といったような真摯な展開の後で、3連符で次第に加速して主部に入って付点リズムの第1主題に飛び込みます。第2主題もコデッタ主題も付点音符が支配します。そのまま統一感で押し通すのかと思ったら、コーダでは全然違う曲想が入り、さすがシューマンといった感じです。
第2楽章は相変わらず美しいモノローグが続きます。やはりこれがシューマンの故郷なのでしょう。
それに比べて第3楽章のおどろおどろしさはすごい違和感があります。おいおいちょっと虚をつきすぎるんじゃあないの? と思いつつもすぐに楽しげに歌ってしまうシューマン。本当に憎めません。トリオもピアニスティックな微妙な味わいがあります。
フィナーレはシンコペーションがテーマです。いきなり音階を上がってゆく序奏があったあとで、八分音符でちょこまか走り回る第1主題が入ります。これまたしばらく単純なリズムで押し通すと、ユーモアに満ちた第2主題がト短調で現れるのです。この唐突さは口をあんぐりといった感じ。よくもまあ交響曲で使ったな、と思います。シンコペーションは最後まで楽章のテーマとして流れ続けます。
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ということで、かなりラフな感じですがご紹介してみました。ピアノや歌曲に比べて彼のスキだらけの交響曲は、精一杯背伸びしている子供みたいでとっても微笑ましい。でもこれも一つのスタイルとして認められると、また鑑賞の幅も広がると思います。是非名曲に聞き飽きてきた倦怠期のクラシックファンにお勧めしたい4曲です。