シベリウスの交響曲全7曲の順位付けというのをやってみたいと思います。全7曲中ベスト5を選びました。
シベリウスは早熟の才を発揮して一躍寵児になりましたが、晩年はすっかりペンを置いてしまったそうです。
それでも彼が残した7つの交響曲は、彼の故郷のフィンランドに置いてはまさに国宝級のものとして今も尚讚えられているのです。小生もフィンランドだけは一度は行ってみたい国であります。
以下、ランキング順に各曲の簡単な説明とおすすめCDのご紹介をしていきます。
第7番 ハ長調
彼の最後の交響曲であると共に、最も短い凝縮された曲でもあります。彼の持つ浪漫性と交響曲に必要な一貫性を見事に調和させた匠の曲であります。楽章間の句切れはなく、一貫して流れる曲です。
曲は、ティンパニのト音から始まってハ長調の音階を一音ずつ登っていく低音弦の歩みから始まります。曖昧な和音の中から、やがて木管の民謡風なフレーズが出てくると、高音弦の2分の3拍子という悠久な律動の中でハ長調の流れが滔々と始まります。それがいつの間にかクライマックスになるとトロンボーンが繋留音に満ちたテーマを紡ぎ始めます・・・というと甚だ説明調ではありますが、まさにそういう破綻の無い流れによって楽曲は進行します。途中、スケルツォ的な活動的な一幕もありますが、総じて時の流れに身を委ねるようなゆったり、かつしっかりとした歩みを進めます。私の一番好きな箇所はといえば、スケルツォの後のいかにも喜ばしいハ長調の宴であります。
この曲に辿り着くまでのシベリウスの苦渋の足跡、それが6番までの交響曲にほかならないのではないでしょうか。
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第2番 ニ長調
この曲は、私がかなりの期間シベリウスの交響曲としてベストワンと考えていたものであります。彼の曲は、総じて3拍子系のものが多い印象がありますが、この第一楽章も4分の6拍子です。3拍子系の特徴として浮動するような微妙なバランスをもっています。最初にリズムと和音を一緒くたにしたような律動が弦楽器によって導かれた後で、木管による軽妙な主題が紡ぎだされます。それに続くホルンの永遠の彼方に問いかけるようなエコー。これはまさに北欧の自然そのものなのです。
第二主題は嬰ヘ短調という思ってもみない調から呈示されますが、これも北極圏に近い激しい自然を体現させるものなのでしょうか。
この曲の秀逸は第二楽章でしょうか。3連符のピチカートの溜息のような全奏に続く、ファゴットの陰鬱なテーマ。そしてさらに諦観を募らせるような第二主題。そこには逃げ道の無いなんともやり切れない袋小路のような北欧の冬を思わせます。あまりにも性急な第三楽章に続いて奏でられる第四楽章フィナーレのファンファーレのような雄大なテーマ。そこに、悪魔のように忍び寄る第二主題の下に流れ続ける執拗なバスの伴奏。シベリウスの歌唱的な傾向が最も顕著な曲です。青春時代には是非聴いていただきたい。
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第5番 変ホ長調
この曲は、第2番とは違った方向でのシベリウスのロマン性の表れ方をしているものと思います。ここには知的な仕掛けがあるのです。それは、メロディーに溺れまいとするシベリウスの足掻きとも思える人為性です。彼は自らの歌を否定して、わざと緊張した響きを演出していると思えるのです。
第一楽章の最初に奏でるホルンのテーマ、あるいは第二楽章の変奏曲のテーマ。それらは断片的には美しいものです。しかしシベリウスは決してそれらに溺れません。むしろそれに挑みかかるような不協和音を被せようとします。それがなんとも痛々しいのは事実です。終楽章に至っては、第一テーマ自体が得体の知れない走句の寄せ集めで、誠に安定感が無い。しかしシベリウスはシベリウスなのです。終楽章の第2テーマの晴れがましさはなんということでしょうか。彼の故郷とも云える3拍子の低音に乗って木管が奏でる息の長いテーマ。これこそ彼の真骨頂であり、得意分野なのです。どうか無理しないで歌ってくれよ! そう言いたいような、形式に傾斜しようとしている傾向は、聴く方としてはちょっと歯がゆさがあります。それがまた憎めないけれど。
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第4番 イ短調
この曲は、彼の傑作だともいわれます。名曲解説全集でもかなり褒めています。
小生も今考えれば素晴らしい曲とも思います。でも何か引っかかるものがあった。これは第5番とも関わることですが、シベリウスが第2番で向かっていた道に疑問を感じ、第3番で一つの限界に達した後での一つの論文であるという存在感が問題なのです。ちょっと理屈っぽい。極端に云えば。
初っぱなからいって、コントラバスの最も低いハ音の上に、チェロの「ハ・ニ・嬰ヘ・ホ」というちょっと異常な音程のウェイブが被さって、やがてチェロのソロが哀しい歌を歌いだします。それらがまるで断片的なのです。それが巧みに融合されたといえば聞こえはいいが、ちょっと考えすぎ。そして第二テーマが嬰へ長調で表れるころにはお腹が一杯という感じになってくる。
こういう見せかけの成熟感は、第二楽章に歪みとなって表れます。スケルツォの第1部分が異常に短くてさらに短いトリオの後にこれまた異常に長いコーダ。その後には冗長な第3楽章の挽歌と、もはや力尽きたようなフィナーレが残るのみです。
はっきり云えば「つまらない」。しかしそれでも小生が第4番目にこの曲を選んだのは、そういう曲の中で自らと抗い続けるシベリウスにとめどない共感を感じるからなのです。そしてここで一つの厄落としをした彼は第5番からの脱皮へと進んでいくのです。
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第6番 ニ短調
作曲家の最後の交響曲の直前のものというのは、何故か「中途半端」な印象が拭いえません。それは作曲家が死ぬ間際に残すものは彼の最も偉大なものであり、その直前のものはその通過点に過ぎない、という聴く側の思い込みがあるのでしょう。
この曲は通常我々が耳にする調性とはちょっと違うものに則っているといいます。確かに始まりはニ短調ではあるが、その第六音が半音上がっています。すなわち、調号がつかないハ長調(あるいはイ短調)の見かけでありながらニ音を主音としているのです。この辺は楽典的には色々と説明があるのでしょうが、ぶっちゃけていえば「民謡調」になったと思えばいい。
第4番で一度自分に疑問を持った後で、第5番の自然と人工の調和を試みた後で、もう一度人間的な視点に戻ったというところか。しかしそれでもなんともいえぬ未消化な感は拭えません。各主題も今一つ印象に欠けます。この辺は第3番のような迷い道に嵌まり込んだ気配も見て取れます。
しかしシベリウスはこの後の第7番で一つの成就を遂げるのです。それはある意味で奇跡かもしれません。それでもこのような葛藤が見て取れるような曲を途中で残したシベリウスがなんとも人懐こく感じさせるのです。そう言った意味でちょっと弱気になったシベリウスを感じたい人は一度この曲を味わってみて欲しいのです。すごくマイナーなのであまり録音もされていませんが。是非是非。
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以上です。ランキングに入らなかった第1番と第3番のなかでは、第1番の荒削りながら劇的なところを推します。第3番はシベリウスがある程度好きになった方にオススメです。