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作曲家別交響曲ランキング

クラシック音楽の交響曲を作曲家別にランキング.
聴く曲を選ぶご参考にしてみてください.

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音符 ベートーヴェン交響曲ランキング 音符


こちらでは、ベートーヴェンの交響曲のランキングについて述べます。全9曲の交響曲があります。
 まずはランキングから先に掲げたいと思います。


以下、ランキング順に各曲の簡単な説明とおすすめCDのご紹介をしていきます。


音符第7番 イ長調音符

ダントツの一位です。ニックネームがつかない為に陰に隠れているだけで、一度聴いたら忘れられないほど感銘を受ける曲だと思います。同じリズムの繰り返しというのは祭り囃子と同じで人を興奮させますが、それに「ノリ」が加わるとこれだけ魅惑的で熱狂的になるという典型でしょうか。イ長調という調性も景気の良い響きに一役買っています。

第1楽章の序奏のとにかく上へ上へと音階的に駆け上がる音形の後で、フルートからそっと紡ぎ出される飛び跳ねるリズムがこの楽章を支配します。全ての楽章が、それぞれ決まったリズムを中心に構成されており、それがあまりにもダイナミックで自由豪放であるために「酔っぱらって作曲したのではないか」と勘ぐる音楽家もいたとか。第2楽章のアレグレットには快く酔わされ、第3楽章では一気にたたみかけられます。そして終楽章に至っては興奮のるつぼです。これだけ盛り上がるフィナーレがあるものでしょうか。マイナーだったこの曲が「のだめカンタービレ」をきっかけにメジャーになった時には快哉を叫んだものでした。

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音符第4番 変ロ長調音符

最初に聴いたときには、第1楽章で序奏から主部にはいるところがあまりにも爆発的、というか躍動的で、面食らったことを覚えております。しかもテンポが速い割に楽想が大股で進行するのでダイナミズムもある。この曲のカルロス・クライバーのライブレコードがこれまた素晴らしくて、それだけでかなり好きになりました。

第2楽章も美しく(クラリネットソロによる第2テーマが秀逸!!)、第3楽章もバネのように飛び跳ねているし、第4楽章の雪崩のような16分音符の洪水もとにかく一気呵成に快く流れていきます。ファゴット奏者殺しの再現部冒頭も緊張感があってGood。かなりポイントが高く二位につけました。

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音符第8番 ヘ長調音符

ベートーベンが生前気に入っていたのは3番と8番だったといいます。3番は、当時の自分の出来る限りの能力を注ぎ込んだ力作ということで入れ込んでいたのでしょうが、8番は自分の楽想がよどみなく流れて素直に出来あがったという点での愛着があったのでしょう。ある程度自分のやりたいことが出来る余裕が生まれていたのかもしれません。

実験的な箇所として挙げられるのは、まず第1楽章の第1テーマでしょうか。4小節毎に編成やダイナミクスが変わります。これは第9番の第1楽章にもつながる手法です。また同じ第1楽章の展開部から再現部に移るところでは、オクターブのモチーフで勢いに乗った高音部が長く延ばす音の下で低音弦がテーマを奏でます。ここは正直言ってちょっとバランス的に苦しいところで、演奏者も高音部をfpにするなどの工夫をしないとテーマがなかなか聞こえてきません。まあ流石のベートーベンでも少々見込み違いはあったのでしょう。それとも作曲当時はバイオリンが今の編成ほど多数ではなかったのかもしれません。

あと付け加えるとすれば、第3楽章メヌエットのトリオの部分のホルンデュオとクラリネットの掛け合いの妙や、第4楽章のさらに大胆さを増した転調でしょう。ティンパニはオクターブ離れたヘ音に調律され、三度の関係にある調から一瞬にしてへ長調に転調するのも凄いのですが、クライマックスで嬰ヘ短調から金管のヘ音の連打でヘ長調に戻るあたりはまさに手品の名人芸のようです。第9番に向けて着々と準備を進めていたのでしょう。ランキングでは三位にしました。

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音符第2番 ニ長調音符

曲調も明るく、かなりベートーヴェンの交響曲に対する肩の緊張も取れてはきましたが、まだ大きい室内楽といった感じも残る曲です。ただ、第1楽章の序奏などは少々内容的に深く、序奏という枠組みを越えていてそれに続く主部が気持ちよく流れるところ、第2楽章の美しいメロディーに満たされるところ、第3楽章の初めてのスケルツォ的な躍動感は面白く、第4楽章の第1テーマについては、何か驚かせてやろう、というようなスタンドプレイがかった手法も使われていて、興味どころ満載です。

第2楽章の美しさが彼の交響曲の中でもあまりにも別格なのでで、これだけでかなり点数が上がります。

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音符第9番 ニ短調 「合唱」音符

今更なにをかいわんや、という名曲であります。合唱を交響曲という緊密な構成の楽曲中に入れたというエポックメイキングはセンセーショナルであったに違いなく、その後何人もチャレンジしながらこの曲を凌げる”第9番”は未だもって現れていないのではありますまいか。

ここでは敢えて、第4楽章ではなく、第2楽章と第3楽章を取り上げたい。
 第2楽章はスケルツォとソナタ形式を合体させたような大規模な構成で、3拍子の主部のフガートで始まるところ、第8番でも用いたヘ音のオクターブに調律したティンパニの華々しい活躍、2拍子にリズムを変えたトリオでの息の長いホルンの主題と流暢な中間部。あまりにも以前の交響曲からの飛躍が華々しいものです。ただ、このもともとは舞曲であった楽章をここまで築き上げたことは確かに素晴らしいけれど、このために交響曲は時間的にも編成的にも長大なものになってしまいました。

さて、横道に逸れましたが、第3楽章です。これは自由な変奏曲でしかも主題が2つありそれぞれテンポも調性も異なりながら、破綻していないという神業のような曲です。無意識下での宗教的な敬虔さに覆い尽くされており、彼の皇帝コンチェルトの第2楽章に通じるところがあります。唯一残念なのは、第4楽章につなげるために意識的に不安定な楽想に終盤は傾くところです。ベートーベンは全体の構成のためには個々の楽章を犠牲にするという面もあり、それが出てしまったのかも。この楽章が第9番という曲の中でしか生きられないのは、芸術的な非情さといってもいいでしょう。

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音符第5番 ハ短調 「運命」音符

「運命はかくのごとく戸を叩く」ということでもう少々食傷気味であるのが正直なところ。あんまり名曲だ名曲だと騒がれ過ぎて陳腐化し、魅力が少なくなってしまったようです。「運命」という大それたニックネームも災いして、この曲だけでベートーベンの印象が固定されてしまっているのは残念。ただ外国では「fate」と併記されることは少ないということです。「運命」という呼び方が日本人に受けがいいのは、深刻な言葉を好む国民性かもしれません。ただ全曲を聴いたことがある人は意外にあまりいないでしょう。

この曲の神髄は、第2楽章の変奏曲にあると思います。始めのチェロの瞑想するようなテーマは、激しい第1楽章の後に安らぎを与えてくれます。そして次第にリズムが細かくなりながら変奏されていくパターンは、第9番の第3楽章と類似しています。第3楽章から第4楽章へ切れ目なくつながるのが新機軸。好みからすると中堅どころでしょうか。

ここでちょっと道草を。第5番というのはこの曲以来作曲家の力試しの意味合いが強くなりました。いわゆる折り返し点というわけです。ちょうど脂ののりきったところで作るということもあるのでしょうが秀作が多いです。小生の好きな交響曲5番は、ブルックナー、プロコフィエフ、ニールセン、オネゲル、そしてショスタコーヴィチの第9番です。

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音符第6番 ヘ長調 「田園」音符

「田園」というニックネームのためにのんびりとした田舎風の曲と勘違いされやすいかもしれませんが、第5番との双子曲といわれるだけあってテーマの展開手法などが似ています。ただ、全5楽章にしたり、3楽章から5楽章までを連続したり、第4楽章では描写的な表現をしたりして一歩踏み込んではいます。

第5番のモチーフ展開がさらに徹底されていて、そのねちっこさが残る第1楽章は一種不気味でさえあります。展開部において同じリズムのモチーフを執拗に繰り返す手法は、「田園」という名に隠れていなければ、かなり好き嫌いが分かれる箇所ではないでしょうか。

それでも第2楽章の展開部の転調の大胆さやコーダの牧歌的な雰囲気、有名な第4楽章の嵐の描写が素晴らしいのでそこそこの順位となりました。

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音符第3番 変ホ長調 「英雄」音符

まじめな人なんだろうけど、周囲にも何か堅苦しさを与えることでなんとなく縁遠くなってしまうんだよなあ、ということが人間ではありますが、この曲は例えればそういう感じです。
 形式的にがっちりとしていて破綻がほとんどみられないことで、聴くのにも骨が折れる。聴いた後でちょっと疲れる。肩が凝る。

確かに「名曲」なのでしょうが、好き嫌いということになるとちょっと遠慮したいところです。第1楽章の比較的単純なテーマを元に寸分な狂いもなく組み上げた徹底した展開手法は見事だし、第2楽章葬送行進曲の後半のフガートなどは感動的かつ魅力的ですが、例えば第4楽章は変奏曲の形をとっているのは珍しいけど、その主題たるやベートーヴェン自身が随分気に入って他の曲で使い回したもの。いい加減飽きてしまいます。大体演奏時間が長い。

そんな理由で、この曲を興味を持って愉しんで聴くのには、ある程度クラシックに耳が慣れて形式に関する理解もしてからの方がいいと思います。そういうことでランキングは思いの外低くなっています。

ところで、シューマンがこの曲に感銘を受けて作ったのが交響曲第3番「ライン」で、調性まで同じ変ホ長調なのは有名。しかしシューマンの生来のロマン性のために、形式や統一性がついて行かず、印象がまるで異なっているのはご愛敬か。(小生は好きですが)

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音符第1番 ハ長調音符

交響曲の世界に満を持して手を染めたベートーヴェンですが、全体的にかしこまった感じで、形式美はあるものの、まだ流暢さが足りないような気がします。ハイドンやモーツァルトの影響を受けているともいわれますが、ベートーベンが接した彼らの晩年作品のような大らかさにはほど遠い。

当時としては和声進行や管弦楽法、そして大きなダイナミクスなど、いろいろな新しい試みをやっているとはいっても、別に楽典を勉強しているわけではない現代の我々からみればそう新鮮なものでもない。
 というわけで順位は低くならざるを得ません。

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最後にベートーヴェンの第9番にまつわる話を少し余談として付け加えさせていただきます。

この曲は、良くも悪くもこの後の交響曲の方向性を決定づけました。この交響曲の与えたプレッシャーにつぶされた作曲家は、マーラー、ブルックナー、ショスタコーヴィチなど枚挙のいとまもありません。ベートーベンが9番を書き上げた後に死んでしまったことが呪いのように彼らを強迫観念で嘖むのです。

マーラーは第8番の後で作った交響曲に番号をつけることをためらい、「大地の歌」と名付け、その後に第9番をかいた後、第10番を未完のまま世を去りました。ブルックナーは第9番を3楽章までかいて力尽きましたし、ショスタコーヴィチは第9番に勢力を使い果たすことを恐れるあまり、軽快な小曲でお茶を濁したために当時のソ連当局からお小言をもらうことになりました。(このかいあってか、彼は15番まで交響曲を残すことが出来ましたが...)